車椅子を使用していると、駅や電車の利用に不安を感じ、遠出をためらう方が多いかもしれませんが、基本的な乗車方法と注意点を押さえておけば心配が軽減されるかと思います。
ここでは、車椅子使用者や介助者の方が電車に乗る前に確認しておきたいことや、乗っているときの注意点などを紹介します。
車椅子が乗車できる電車かどうかを確認しよう
最近できたばかりの駅舎や新型車両は、障害の有無にかかわらず、誰もが利用しやすいユニバーサルデザインを採用しているものが多くあります。また、首都圏では歴史がある古い駅でも、バリアフリー化や駅員のサポート強化が進んでおり、車椅子使用者のお出掛けにも十分対応できる駅が増えています。
しかし、お出掛け先や状況によっては、車椅子での利用が難しいケースもあります。下記にあてはまる場合は、事前に乗車ができるかどうかを確認してから、お出掛けの計画を立てるといいでしょう。
車椅子のサイズが大きい場合
各鉄道会社では、エレベーターの大きさや駅のホームの幅などを考慮して、利用可能な車椅子のサイズを規定しています。使用している車椅子のサイズが大きいと必要な設備を利用できない可能性がありますので、車椅子のサイズを確認して、各鉄道会社に問い合わせてください。
利用駅が地方の路線や無人駅などの場合
地方の駅など、車椅子使用者をサポートする駅係員が不足している駅では、車椅子使用者のサポート依頼に合わせて人員を調整する必要があり、「今から電車に乗りたい」「今日、この駅で降りたい」といった急な依頼に対応することができないかもしれません。無人駅の場合ですと、日程によっては駅側の対応が難しいこともあります。
駅係員が十分に配置されている首都圏の駅でも、朝夕の通勤・通学ラッシュで混み合う時間帯や、何らかのトラブルで係員が出払っている場合などは、サポートの手が回らないことがあるでしょう。どうしても決まった時間に乗車したいときは、予定が決まり次第、乗車、下車、乗換駅などに連絡し、人員の調整を依頼しておくことをおすすめします。
ハンドル形電動車椅子の場合
ハンドルで向きを変えられるハンドル形電動車椅子は、自走用と違って操作の労力が軽減できて便利な半面、エレベーターやスロープなどの段差がある古い駅で利用するのは困難です。駅舎内に改装中や清掃中の箇所があると、思うように移動できない可能性もあります。鉄道会社に利用する予定の駅名と時間帯を伝え、ハンドル形電動車椅子が利用できるかどうかを、事前に問い合わせておいたほうがいいでしょう。
また、駅舎は利用できても、客室までのあいだにステップやデッキがある特急列車には乗車できない可能性があります。乗りたい電車が決まっている場合は、該当する電車にハンドル形電動車椅子で乗れるかどうかも併せて問い合わせいただくことをおすすめします。
車椅子で電車に乗る前にやっておきたいこと
車椅子での外出が決まったら、トラブルなく移動できるよう、電車利用の準備を進めます。実際にお出掛けする前に、下記の3点を実施いただくことをおすすめします。
利用する駅舎のバリアフリー設備を確認する
乗車する駅、乗り換える駅、下車する駅、それぞれの駅舎について、下記の設備を確認しましょう。
<駅舎のバリアフリー設備>
- スロープ
- エレベーター
- 車椅子用階段昇降機・リフト
- 車椅子対応トイレ
列車の混雑具合を確認し、余裕を持ってスケジュールを立てる
通勤ラッシュの時間帯や乗降客の多いターミナル駅では、混雑していて予定どおりに動けないことがあります。「乗る予定だったエレベーターが混雑していて乗れない」「乗車するはずの列車にスペースの余裕がなく乗り込めない」「駅係員の手が空いていないため次の電車になる」といった予定外の出来事を想定しておき、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
新幹線での介助は、予約時に申請する
新幹線で車椅子対応の座席を予約し、介助を依頼する場合は、下記の情報を予約時に伝えましょう。
<新幹線予約時に介助を依頼する場合に伝える内容>
- 乗車日、乗車区間、指定席の希望の有無
- 付き添いの有無
- 車椅子の種類(手動・電動)
- 同行する人数
一部の列車では、車内移動専用の車椅子を貸し出している場合がありますので、予約の際に確認してみましょう。
車椅子で電車に乗る際の注意点
準備を済ませて出発当日を向かえたら、いよいよ車椅子で乗車駅に向かいます。駅についたら、下記の点に注意して行動するといいでしょう。
改札口で駅係員に声を掛ける
駅係員にサポートを依頼する場合や事前に依頼している場合は、改札口の駅係員に声を掛けて、サポートしてもらいます。
依頼したいサポート内容を具体的に伝える
車椅子対応のエスカレーターの操作や、ホームから乗車口へのスロープの設置など、サポートしてほしい内容を駅係員に伝えます。
目的駅や乗換駅を伝える
乗り換える駅や目的駅を伝え、降車や移動のサポートを依頼します。乗車駅の係員が乗車時刻、乗車する車両、特徴などを伝えて、下車駅の係員と連携してくれます。
車椅子対応の扉がある車両の昇降口に向かう
近年、ホームと列車の隙間を狭くした車椅子対応の扉を設ける駅が増えてきました。自力での乗り降りだけでなく、サポートもしやすいので便利です。乗車前に、車椅子対応の扉がある車両の位置を確かめておくことをおすすめします。
ホームで待つときは線路と平行の向きで停止し、ブレーキをかける
ホームで待っているあいだ、車椅子が線路に向かって動き出してしまうと大変危険です。線路に対しては、平行の向きに車椅子をとめ、必ずブレーキをかけましょう。
ホームが狭い場合は待合室などを利用する
ホームが狭い駅では、待っているあいだにほかの方と接触する危険があります。車椅子の前後や左右に十分なスペースがとれない場合は、待合室などで電車が来るまで待つことをおすすめします。
トイレはなるべく乗車前に済ませておく
車椅子対応スペースがある特急列車や、比較的乗車時間が長いローカル路線の電車には、車椅子対応のトイレが設置されていることがほとんどです。
しかし、慣れないうちは急ブレーキなどの揺れに対応することも大変ですので、トイレはできる限り乗車前に済ませておいたほうがいいでしょう。
車椅子で電車に乗っているときの注意点
車椅子で電車に乗った後も、いくつか注意すべき点があります。詳しい対処法について確認しておきましょう。
車椅子専用のスペースに乗車する
新幹線の一部や首都圏近郊を走る在来線の一部には、車椅子のまま乗車できる車椅子専用スペースが設けられています。混んでいる車内でも周囲に気兼ねなく過ごせて、安全性も高いため、車椅子専用スペースがある場合は積極的に利用するといいでしょう。
車椅子専用スペースがない電車では、進行方向に対して車椅子を直角にとめることで、急ブレーキがかかった際、前方に放り出される危険を軽減できます。
ブレーキを確実にかけ、手すりにつかまる
車椅子をとめる位置が決まったら、急停車や突然の強い揺れに備えて、ブレーキをしっかりかけましょう。手すりにもつかまっておくと、より安心です。
電車内トイレの利用は慎重に
電車内のトイレをやむをえず利用する場合は、時間に余裕を持って慎重に行います。急ブレーキがかかった際のことを想定し、移乗や立ち上がりなどは電車の停車中に行うことをおすすめします。
下車する駅が近づいてきても、無理のないように焦らず行動しましょう。万が一に備えて吸水パンツを着用しておくと、乗車時間が長くても不安なく過ごせます。
鉄道会社とのコミュニケーションを積極的にとりましょう
首都圏では、駅舎や車両のバリアフリー化が進んでおり、車椅子でもかなりスムーズに行動できるようになりました。
ただし、駅係員が少ないローカル線の駅舎などでは、車椅子使用者への対応に人員を割けない場合があります。遠方の駅を利用する場合は、各鉄道会社にまえもって利用したい日にちを伝え、利用の可否を確認してからお出掛けすることをおすすめします。
駅係員のサポート体制も整ってきていますので、積極的にコミュニケーションをとって、安心して利用できるよう準備するといいでしょう。
東京都内の駅情報に関しては、下記のページで検索するのが便利です。駅ごとに、エレベーター情報やトイレ情報、貸出品情報といった設備の内容が確認できますので、お出掛けの際にはぜひご活用ください。
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