車椅子で旅行をする場合、旅先のバリアフリーに関連した情報の収集が欠かせません。旅行に関連した介助サービスや、バリアフリーに対応した宿・ツアーなどを有効活用すると、旅行はさらに楽しく快適なものになるでしょう。
ここでは、車椅子で旅行をするときに知っておきたいサービスのほか、準備の際のチェックポイントや注意点などを紹介します。
車椅子旅行のお出掛け先や旅館・ホテルの検討方法
車椅子の旅行でまず検討したいのは、ホテルや旅館、参加するツアーがバリアフリー対応かどうかです。バリアフリーとは、生活していく上でのバリア(障壁)を取り除くことです。
一般的に、車椅子使用者をはじめとした障害を持つ方にとってのバリアは、段差や階段などの「物理的なバリア」、障害を理由に行動を制限する「制度的なバリア」、障害があることで情報が得にくくなる「文化・情報面のバリア」、差別や偏見で障害を受け入れない「意識上のバリア」があるといわれています。
車椅子で旅行する際には、こうしたバリアを取り除き、障害や病気の有無、年齢にかかわらず、すべての方が楽しめるよう設計された「ユニバーサルツーリズム」に対応している旅行会社やホテル・旅館を選ぶことをおすすめします。
さらに、通路の段差や車椅子対応トイレの場所などをまとめたバリアフリーマップや、各自治体が作成している情報サイトなどを活用して情報を集めておくと、慣れない旅先での移動の際に役立つでしょう。
バリアフリーマップについては、下記のページで詳しく解説していますので、ご確認ください。
当サイト「だれでも東京」では、都内宿泊施設の客室情報をはじめ、飲食店、劇場、公園などの「車椅子使用者対応トイレ(車椅子使用者用便房等の車いす使用者が円滑に利用することができるトイレを含む)」の有無などを網羅しています。
約90項目の検索項目から利用者の条件に合った情報を提供し、車椅子での旅行をサポートしていますので、旅行の際はぜひご活用ください。
車椅子による電車の利用方法
旅行をする前にチェックしておきたいのが、駅や電車に設置されているトイレの種類と設置場所についてです。
新型の鉄道車両や新幹線、長距離にわたる路線を走る車両には、車椅子対応のトイレが設置されていることがほとんどです。乗車前にトイレが設置されている車両を確認し、できるだけ近くに乗車することをおすすめします。
旅行先でローカル路線を使う場合は、鉄道会社に利用駅のトイレについて確認しておきましょう。Google マップなどで、目的地の地名と「バリアフリートイレ」などのキーワードで検索して、事前に情報を集めておくのもおすすめです。旅行の目的地が東京都内であれば、当サイト「だれでも東京」の「車椅子使用者対応トイレ」から探すこともできます。
車椅子旅行に欠かせない持ち物と注意点
ここからは、車椅子で旅行するときに欠かせない持ち物とともに、それぞれの注意点について紹介します。
クッション、ひざ掛け
長時間の旅行では、腰やお尻に負担がかかるものです。快適な車椅子移動を続けるためには、体圧が分散できてずれにくい車椅子用のクッションがあるといいでしょう。また、体に負担がかかる気温差を最小限に抑えるためには、大判のタオルやひざ掛けを準備しておくと安心です。
電動車椅子の予備バッテリー
電動車椅子で旅行する場合は、予備のバッテリーがあると、充電池が不意に切れてしまったときでも安心です。充電器とともに、予備のバッテリーも用意しておくことをおすすめします。
なお、電動車椅子に搭載されたバッテリーの種類によっては、飛行機に乗れないこともあります。機内への持ち込みや預け入れなどを制限されている種類のバッテリーもありますので、電動車椅子を利用した旅行で飛行機を利用する場合は、必ず航空会社へ問い合わせをしましょう。
国土交通省が公表している持ち込み・預け入れできるバッテリーの基準は、下記のように制限されています。
<飛行機へ持ち込み・預け入れできる電気車椅子のバッテリーの基準>
- 非防漏型蓄電池…預け入れ・持ち込みともに不可
- 防漏型蓄電池…1個
- ニッケル水素電池…制限なし(航空会社の規定やワット時定格量の数値で持ち込み・預け入れできない場合もある)
- リチウムイオン電池…1個(160Wh以下の場合は2個まで)
目視で種類を確認できるバッテリー以外は、事前に電動車椅子メーカーに問い合わせ、バッテリーの種類を確認しておくことをおすすめします。
着替え、大人用オムツ
「車椅子対応トイレが混んでいる」「トイレがあると思った場所にない」「清掃中でトイレが使えない」といった万が一の事態に備えて、大人用の紙おむつや携帯トイレも持って行くといいでしょう。
荷物にはなりますが、着替えも多めに持って行くことをおすすめします。
福祉用具のレンタル
お出掛け先の施設がバリアフリー化されていない可能性がある場合、持ち運びできる折りたたみスロープや、杖などを持って行くと便利です。
荷物を少しでも減らしたいときは、旅行先の医療用品店や介護用品レンタルショップで借りたり、旅行先に配送してくれるレンタルサービスを利用したりするのもひとつの方法です。
また、旅行先での長距離移動に不安がある場合は、旅先のホテルや観光施設、レンタルショップなどで車椅子を調達することもできます。短期間、無料で車椅子を貸し出す「車いすステーション」を設置している自治体もありますので、事前に調べておきましょう。
車椅子旅行に適した服装と注意点
旅行の際、車椅子使用者の方は服装について、どのように気を配ればいいのでしょうか。ポイントは、「危険性がないこと」「サポートしてもらいやすいこと」の2つです。
明るい色の服を選ぶ
白っぽい色や明るい色は、緑色や茶色、黒色などに比べて暗がりでも見えやすいといわれています。日が落ちた時間帯に屋外で行動することが多い場合は、できるだけ彩度の高い服装を選ぶことをおすすめします。
車軸に巻き込まれない長さを意識する
マフラーやストールなどの防寒具類は、車椅子の車軸に巻き込まれる危険がありますので、簡単には取れないようにしっかり巻いてください。コートやスカートなども、車輪に接触しない丈を選ぶといいでしょう。
袖口の広いシャツやカットソーは控える
袖口の広いシャツやカットソーは、車輪に接触して汚れたり、ボタンが外れたりする可能性がありますので、避けたほうが無難です。
肩周りが動かしやすい服を選ぶ
手動の車椅子を車椅子使用者自身が操作する場合、肩を大きく動かして前進する必要があります。肩周りが窮屈ですと、車椅子操作の動きに支障が出るため、肩周りにゆとりがある服か、ストレッチがきいた服などを選びましょう。
靴はフットサポートにフィットする物を選ぶ
フットサポートから足や靴が落ちてしまうと、車輪に巻き込まれたり、落ちている物でケガをしたりする可能性がありますので、靴はフットサポートからずり落ちにくいスニーカーなどが適しています。靴底がすべりやすい革靴や、脱げやすいサンダルなどは控えましょう。
車椅子の旅行が便利になるサービス
昨今では、車椅子の旅行をサポートしてくれる、さまざまなサービスが登場しています。車椅子使用者の一人旅や介助者が十分にサポートできないときは、プロの手を借りることも検討しましょう。
介護資格の保有者が同行するバリアフリーツアー
介護資格の保有者が旅のプランを作成したり同行して介助を行ったりする、バリアフリーツアーを実施する旅行代理店が増えています。ヘルパーの方々がサポートしてくれるツアーに参加するのもひとつの方法です。
福祉タクシー、介護タクシー、UDタクシー、バス(リフトつき車両)
体が不自由な方や、長時間の移動に不安がある方などが利用できる介護タクシーや、すべての方に優しいユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)、車椅子のまま乗車できる「大型リフトつき観光バス」なども、車椅子使用者の強い味方です。
車椅子での旅行は、事前の情報収集がポイント
車椅子での旅行時は、事前の情報収集がとても大切です。「だれでも東京」では、バリアフリーに対応した施設やトイレなどを簡単に探すことが可能です。車椅子でも負担の少ない旅行先を見つけてください。