車椅子でのお出掛けには、気がかりなことが数多くあります。中でも外出先にあるトイレの使い方は、多くの車椅子使用者にとって重大な関心事なのではないでしょうか。
ここでは、お出掛けする前に知っておくと安心できる、車椅子使用者のトイレの使い方について、詳しく紹介します。
車椅子で利用できる車椅子使用者対応トイレが便利
外出先のトイレには、一般的な男性用トイレと女性用トイレのほかに、バリアフリーに対応したバリアフリートイレが設置されている場合があります。バリアフリートイレは、一般的な狭いトイレを利用しにくい車椅子使用者や高齢者、乳幼児を連れた人、妊娠中の人、オストメイトの人、性別で区切られたトイレに抵抗がある性的マイノリティの人など、あらゆる人が気兼ねなく使える広さと機能を備えたトイレのことです。
近年では、公共交通機関や駅、公共施設、商業施設などで設置が進んでいます。年齢、性別、国籍、文化、体の状態などを問わず、すべての人が暮らしやすいように、街や設備を整える「ユニバーサルデザイン」が浸透するにつれ、設計段階からこうしたトイレを備えた都市づくりに取り組む自治体も増えています。
バリアフリートイレの特徴
バリアフリートイレは、一般のトイレを利用しにくい人を対象に、使いやすい広さと設備があるトイレです。主な設備には、下記のようなものがあります。
<バリアフリートイレの機能・設備>
- 車椅子が方向転換できる広いスペース
- 開閉が簡単な扉と、押しやすい開閉ボタン
- 手すり
ほかにも、オストメイト用の汚物流し台やシャワー、ベビーチェア、おむつ替えシート・ユニバーサルシート(介助用ベッド)、着替え台(チェンジングボード)などが設置されている場合もあります。
車椅子使用者対応トイレの詳しい機能については、下記のページで詳しく解説していますので、ご確認ください。
車椅子使用者対応トイレとは?設備の内容や使い方のマナー、探し方を解説
バリアフリートイレを使用する際のマナー
バリアフリートイレは、先に挙げたような、一般のトイレが利用しにくい人のために設置されたトイレです。しかし、本来の目的で使用したい人が、我慢をしいられるケースも散見されています。
国土交通省が車椅子使用者に対して2011年に実施した「トイレの利用実態に関するアンケート調査」では、94.3%もの人が「多機能トイレで待たされた経験がある」と回答したそうです。
このような実態に鑑み、国土交通省は2020年にバリアフリー法を改正し、障害のない人の多機能トイレの利用はできるだけ控え、高齢者や障害者に譲るなど、適正な配慮をすることなどを基本方針に盛り込みました。
そこで、バリアフリートイレを利用する際の、一般的なマナーについて見ていきましょう。
一般的なトイレでも問題なく使える人は、できるだけ利用を控える
別のトイレを探して移動するなどの選択肢が多数ある人は、やむをえない事情がある場合や緊急事態以外、バリアフリートイレの利用はできるだけ避け、必要としている人の利用を優先してください。
長時間の占拠はしない
バリアフリートイレを必要としている人は大勢いますので、用を済ませた後は、すみやかに次の人に譲るようにして、長時間占拠しないように注意してください。
便座やユニバーサルシート(介助用ベッド)は必ず元に戻す
手や腕を動かしにくい人にとって、便座を戻す動きは大きな負担となる場合もあります。洋式便器を使用する際、便座を上げたら、使用後は必ず元に戻しましょう。
また、おむつ交換などに利用されるベビーシートやユニバーサルシート(介助用ベッド)も、利用した後は忘れずにたたんでください。幅を取るユニバーサルシート(介助用ベッド)が出しっぱなしになっていると、トイレの中が狭くなり、特に車椅子使用者の移動を妨げてしまうからです。
トイレットペーパーがなくなっていたら補充する
補充用のトイレットペーパーは、手や腕を動かしにくい人や、車椅子使用者には取りにくい場所に保管されていることがあります。補充作業が難なく行える人は、トイレットペーパーの残りがなくなっていることに気づいたら、進んで補充するようにしてください。
車椅子から便座に移乗する方法
ここからは、車椅子使用者が外出先で車椅子使用者対応トイレを利用する際の、便座に移乗する方法をご紹介します。介助をする場合は、車椅子使用者の自尊心を傷つけないよう、サポートしてください。なお、自力でできることは極力自分で行ってもらうようにしましょう。
1. 車椅子をとめる
トイレに入ったら、便座へ移乗しやすい位置に車椅子をとめます。
上記のイラストのように手すりを正面にして、便座に対しては直角になるように車椅子をとめます。
2. 車椅子に浅く腰かける
手すりにつかまるか介助者が抱えやすいよう、車椅子の前方にお尻を動かして、浅く座ってもらいます。
3. 手すりなどにつかまって立ち上がる
手すりや介助者の支えを使って立ち上がります。介助者は、車椅子使用者の腕の下から背中側に手を回し、車椅子使用者の腕を首に回す形で、上半身を支えながら立ち上がりをサポートしましょう。車椅子を離れたら手すりを持って、立った姿勢を維持してもらいます。
4. 下の衣服を脱衣する
手すりにつかまったまま、お尻を便座のほうに向けてもらい、「ズボンを下ろしますよ」などと声をかけながら、ズボンやスカート、下着などを下ろすのを手伝います。
なお、介助者が脱衣を手伝うのは、依頼を受けたときだけにしましょう。明らかに自力で着替えをするのが困難な場合も、「お手伝いしましょうか?」と一言かけてから行うようにしてください。
5. 便座に座る
前傾姿勢をとりながら便座に腰を下ろし、姿勢が安定したら、介助者はいったん席を外します。助けを求められたらすぐに行動できるよう、カーテンの外側かトイレの外など、声が届く範囲で待機しましょう。
6. 清拭する
トイレットペーパーで汚れを拭き取ります。自力で清拭するのが難しい場合は介助者が声をかけ、車椅子使用者の了承を得てから清拭してください。
7. 下の衣類を着衣して車椅子に戻る
便座に座るときと逆の手順で、手すりや介助者の支えを使って立ち上がり、下着やズボンを上げて衣服を整えます。向きを変えて前傾姿勢をとりながら、ゆっくりと車椅子に戻りましょう。
車椅子使用者対応トイレを探して外出しよう!
お出掛けする前にバリアフリートイレの場所を確認するには、バリアフリー対応の施設や地域情報が検索できる「だれでも東京」の検索機能が便利です。
「だれでも東京」で必要な情報を集め、無理のない外出計画を立ててください。
※「だれでも東京」ではバリアフリートイレを「車椅子使用者対応トイレ」で検索できます。
施設ページ(車椅子使用者対応トイレ)